生徒もいない静かな夏のヒビキ・・・

夏休みの土曜日。
しかも午後ともなると、部活動の生徒たちも、受験に向かう高3も帰り、学校の廊下はひっそり閑(かん)が漂う。
この学校は70年以上前にドイツ人の設計で建てられたため、周辺の一般的な学校とは異質の、どこかヨーロッパ風の趣である。
教室の鍵なんぞ、今時、お宝の開かずの金庫を開ける番組でなければお目にかかれないような、極太の真鍮(しんちゅう)鍵である。
ドイツ人設計のため、天井はやたら高い。
カトリックの学校なので、校内にはそこかしこにキリスト様をモチーフにした壁画がある。
建設中の新校舎にも、その思いを乗せて、ステンドグラスが入る予定である。
古くなり過ぎている面もあるが、見ようによっては重厚で落ち着いたアンティークだ。
数年前に演奏家も来たが、校内にはJAZZが似合う。
質素倹約のカトリック精神が溢れる浦上の地にはふさわしい。
生徒のいない廊下を歩いてみると、授業で生徒が書いた書写作品が貼られてた。
決して達筆ではないが、一生懸命取り組んだ様子が文字からくみ取れる。
職員室前には中学生向けに「何の歯か?」と問いかけられていた恐竜の歯が置かれている。
生徒の知的好奇心をくすぐろうとする先生からのメッセージでもあり、大人の企みである。
そういえば、何日か前に生徒が見つめていた。
企みにはまった素直な生徒である。
男子三日会わざれば刮目してみよ。
この夏、生徒たちはどんな経験を積んで新学期にやってくるのだろうか。
彼らの青春が実に眩(まぶ)しい。