共通テストの朝


1月18日土曜日、7時47分。長与町の天気は晴れ、気温は4度。カイロが欲しくなるけど、なくても大丈夫。
今日は共通テスト1日目。8時半集合。
まだまだあと30分以上余裕がある。
長崎県立大の正門の前でキミを待つ。
たくさんの準備をして、また、たくさんのことを我慢して今日を迎えたキミ。
「頑張る」なんて言葉では言い表せないくらい、悩んで、傷ついて、それでもノートをめくる手を、ペンを持つ手を止めなかったキミ。

しばらくすると、横断歩道を渡ってキミはやってきた。
白い息を吐きながら「おはようございます」と微笑む顔には緊張が混じる。

こういうときに、いつも悔しく思う。
どんなに単語を知っていても、本を読んでいても、キミにかける最も良い言葉を持っていない。
「頑張れ」よりももっと強く背中を押せて、「大丈夫」よりもキミの不安な心を包み込む言葉があればいいのに。
無力な私は、いつも教室で言っているのと同じ「おはよう」を返すのが精一杯だ。
しかし不思議と、不安や心配な気持ちはなかった。
そんなものはいらないと心の底から思えた。

試験が終わったら、どんな言葉をかけようか。
そんなことを考えながら、キミが受験会場に向かう背中を見送った。